当教室では、効率よく確実に眼科の臨床医学を系統だって教育しています。そのための柱は、以下の3つです。
- 基礎知識の理解
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多数の症例を経験すること
による実地訓練 - 文献的考察
具体的には、①については、各分野のスペシャリストによる実践的講義(毎月第4月曜日)、②については、外来責任医師(講師以上)がその週にきた新患を中心とした症例を多数プレゼンし短時間で診断を考えるspotdiagnosis(毎月第2月曜日)、③では症例報告のみならず多数の臨床研究を国内外の主要な学会(日本眼科学会総会、臨床眼科学会総会、アメリカ視覚と眼科会議、アメリカ眼科学会など)にて発表し、海外のトップジャーナルに多数の論文を出しています。
以上の教育は大学のレジデントだけでなく、関連病院出向後、開業後も参加することができ、卒後教育の推進に大いに貢献しています。
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第1回蛍光眼底造影の読影について(大野 京子)
蛍光眼底造影検査は眼科の検査の中で非常に身近な汎用性の高い検査方法です。撮影された造影結果をどのように読むか、どのように眼底所見にフィードバックするかは診断、治療を決める際に重要な情報になります。OCTとまた違う側面からの情報を付加することにより、病態を深く多方面から理解することが可能になります。本クルズスでは、読影の基本から判断に悩む難しい症例まで実際の症例を多数提示しながらDiscussionを行って理解を深めたいと思います。
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第2回急性網膜壊死の病態と診断基準(高瀬 博)
急性網膜壊死は、単純ヘルペスウイルスまたは水痘帯状疱疹ウイルスの網膜感染により生じる感染性ぶどう膜炎の一つである。急性網膜壊死は非常に予後不良な疾患であり、本疾患の視力予後向上のためには早い段階で本疾患を「疑う」事が第一に必要である。しかし、急性網膜壊死の病態は「網膜周辺部に白色の病変が存在するぶどう膜炎」という程度にしか認識されていない事がしばしばあり、他の特徴的な眼所見を理解していないと初期診療で見落としてしまう可能性がある。本クルズスでは、特にこれから第一線で診療を開始する若手医師を対象に、急性網膜壊死の病態と診断基準について概説し、本疾患に対する理解を深めて頂く。
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第3回自発蛍光勉強会(石田 友香)
眼底自発蛍光は近年登場し、知見が集まり、最近臨床の現場でも広く使用されるようになった検査方法です。眼底のリポフスチンという視細胞の代謝産物から発する自発蛍光を捉えて画像にしたものであり、主にその代謝に関わる網膜色素上皮細胞の機能を反映すると理解されています。細胞機能を示すという意味で、造影検査やOCTとは違った側面から眼底を観察することができるので、画期的な補助診断ツールです。そしてリポフスチン自体の蓄積、網膜色素上皮細胞の荒廃や機能異常の変化が診断や経過観察に重要な疾患の場合には眼底自発蛍光を撮影する意義が高いと思います。本クルズスでは、読影の基本から始め、日常よく見る疾患を提示します。皆さんの知識向上につながれば幸いです。
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第4回保険診療の実際(秋澤 尉子)
臨床で行った検査や治療をきちんと反映するためにも、保険診療の正しい知識を持つことは非常に重要です。本クルズスでは、保険診療における①基本的な知識②眼科診療で重要なこと③大学病院での問題点④今年度の改定で知っておくべきことを中心に、実際の請求例などを提示しながらわかりやすく解説していただきます。
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第5回OCT(島田 典明)
光干渉断層計は低侵襲に眼底などの構造を詳細に捉えることを可能にした検査で、細隙灯検査や眼底検査と並んで重要な検査です。特に網膜の微細な構造から得られる情報は黄斑部疾患の治療方針、治療効果を決める際に必須となっています。さらに前眼部や、脈絡膜、強膜、硝子体と眼内の様々な組織へ応用され、次々に新しい知見が生まれています。本勉強会ではOCTの基礎から応用までを概説し、どのように臨床の中でOCTと向き合っていくかを話したいと思います。
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第6回ぶどう膜炎診断の進め方 〜初級編〜(高瀬 博)
ぶどう膜炎は、眼内に炎症または感染性病原体による組織破壊を生じる疾患であり、それによる種々の続発症、例えば角膜混濁、続発緑内障、併発白内障、硝子体混濁、黄斑浮腫、網膜剥離、視神経萎縮などにより視機能が脅かされる事となる。これらを未然に防ぐには早期の原因診断と、疾患特異的な治療の速やかな開始が重要である。しかし、ぶどう膜炎の原因疾患は多岐にわたるため、その原因診断は系統的に進めていく必要がある。本クルズスでは、ぶどう膜炎診療の第一歩として注目すべき眼所見、行うべき各種全身検査とその意義について総論を述べる。
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第7回眼形成・涙道疾患(林 憲吾)
眼形成外来は眼瞼、眼窩の疾患を担当します。眼瞼下垂の手術として、挙筋腱膜やミュラー筋をターゲットにする各術式について説明します。先天眼瞼下垂には挙筋群の短縮は適応がなく、前頭筋吊り上げ術が必要となります。吊り上げ術に使用する材料によって、手術方法が異なりますので、各材料のメリット、デメリットを含めて解説します。眼窩については、眼窩骨折のタイプと手術方法の概要を説明いたします。また涙道外来では、涙道閉塞に対する術前検査と治療方針を中心に、プロービングおよびチュービング、DCRの鼻内法および鼻外法について説明します。
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第8回OCT読影道場(島田 典明)
OCTの普及により、日頃の診療でOCTを読影される機会が増えてきています。OCTにて判断を迫られる疾患について、どのようにOCTを解釈しているかについて、数回にわたって記述させていただきます。今回はERMについてです。
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第10回未熟児診療(横井 多恵)
近年の周産期医療技術の進歩により、超低出生体重児の生存率が飛躍的に向上し、結果として未熟児網膜症の発症も増加している。光凝固による網膜症の管理技術の向上や、抗VEGF薬硝子体内注射や早期硝子体手術などの新たな治療法の到来により、かつて制御不能とされた劇症型網膜症に罹患した児が、普通学校に通うことも稀ではない時代となった。しかし未熟児診療においては今なお高い診断能力と経験に基づいた迅速な判断が不可欠である。本クルズスでは、未熟児網膜症の病態とその管理について概説し、本疾患に対する理解を深めていく。
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第11回眼内腫瘍の診断と治療(石田 友香)
網膜脈絡膜の眼腫瘍は、良性のものがほとんどですが、悪性黒色腫や転移性腫瘍など悪性のものもまれに見られます。良性も悪性も頻度は低いですが、見落とさず、的確に診断し、必要なものに必要な治療を早期に行う必要があります。まず、見落とさないためには、どのような所見か知っておく必要があります。本クルズスでは、そのような網膜脈絡膜の腫瘍について症例提示を中心にお示しします。皆さんの明日の診療の役に立てれば幸いです。
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第12回診療報酬請求について- 病名とコストのつけ方のルール -(宮永 将)
診療報酬請求は、直接は眼科の診療と関係がないため疎かになりがちですが、自分の行った診療行為を評価してもらう上では欠かせないプロセスです。医師として関わっていかなければならない事なので、正しい知識を持つことが重要です。診療報酬請求はレセプト(診療報酬明細書)で行い、このレセプトが審査の対象となります。審査では、コスト(処置・検査・手術料など)や処方薬に対応する病名がなかったり、ルールに違反した請求を行うと査定され、請求した診療報酬は削除されます。本クルズスでは、診療報酬請求のしくみを解説し、病名やコストの正しいつけ方、算定のルールなどについて説明します。また、大学病院の傾向に即した例題を挙げて、適切な対処をお話します。
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第13回屈折矯正について(長岡 奈都子)
本クルズスでは屈折矯正手術の歴史及び種類の概要について述べるとともに、現在当科専門外来で行っております多焦点眼内レンズや有水晶体眼内レンズ、トーリック眼内レンズを用いた手術についてご紹介しております。また白内障手術において、プレミアム眼内レンズのみならず単焦点眼内レンズで施行可能な屈折矯正(モノビジョン法)についても触れております。基礎的な内容ではございますが皆様の診療の一助になりますと幸いです。
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第14回Primary Intraocular Lymphoma (PIOL) (岩崎 優子)
眼原発悪性リンパ腫、特にPrimary Vitreoretinal Lymphoma (PVRL)は中枢神経病変を合併することも多く、生命予後不良の疾患である。硝子体混濁や虹彩炎を伴い、ぶどう膜炎疾患との鑑別がしばしば問題となる。本クルズスでは、PVRLに特に注目し、その疫学、病因、病態、臨床所見、診断法について成書レベルでの知見を勉強した。そののち、高悪性度B細胞リンパ腫の予後予測因子についての論文報告も紹介した。眼所見の評価が、患者の予後予測、ひいては全身管理に貢献できる可能性があるかについて考えた。
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第15回AMD(諸星 計)
本勉強会では、AMDの診断基準と、各サブタイプの特徴的所見と診断ポイントとガイドラインに即した治療指針について復習し、抗VEGF薬の再投与基準・スケジュール(PRNやtreat & extendなど)や、薬剤の特徴に応じた使い分けについて勉強しました。その他、本国のAMDはPCVが過半数であり、RAPの僚眼発症率/3年は100%であることなど知っておくべき疫学的知見について、僚眼発症リスク計算方法をふまえて紹介させていただきました。また、AMD・CSC関連疾患としてパキコロイド(脈絡膜肥厚)という疾患概念が近年注目されています。パキコロイドは現時点ではまだ明確な定義はありませんが、パキコロイド色素上皮症:PPEと、パキコロイド新生血管症に分類され、典型AMD・PCVとCSCは同一スペクトラムに属する疾患であるという仮説の説明に頻用されています。しかし一方でAMDやCSCの疾患感受性遺伝子は異なるとの報告もあり、パキコロイドが新しい疾患として確立するにはまだ議論の余地がありますが、AMDサブタイプの同定や活動性判定の補助材料として、脈絡膜厚がさらに注目されるようになるかと思われます。
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第16回白内障手術(篠原 宏成)
今回の勉強会では、手術を始めて間もない先生を対象に、白内障手術についてお話致しました。内容としては、白内障手術の適応、術式、初心者が避けるべき症例、超音波機器の特性と設定、手術手技のロジックとコツ、また若い先生方に習得してほしい計画的嚢外摘出術の方法とコツなどです。近年では白内障手術のほとんどが超音波乳化吸引術で行われますが、嚢外摘出術や経毛様体扁平部水晶体切除など他の術式もあり、それぞれ適応が異なります。また白内障手術では慣れないと難しい症例もあり、散瞳不良や高度核硬化などすぐ分かるもの以外にも、瞼裂狭小や後部円錐水晶体など術前診察では気づきにくいものもあるため、術前診察で注意し てほしい点や、慣れるまで上級医に任せるべき症例についてお話しました。若い先生はともすると手術のロジックや機器のメカニズム・設定などの知識が乏しいままに手術手技の習得を急ごうとすることがありますので、これらの点についても解説しました。若い先生方が手術を習得するにあたって一助となれば幸いです。